ドイツ語を打つには、ふだんお使いの日本語キーボードとよく似ていながら、いくつもの点で異なる配列を使います。 この手引きでは、QWERTZ(クヴェルツ)配列の仕組みと、指の置き方、覚える順序を説明します。 ドイツ語独自の ä ö ü ß の打ち方も、順を追って見ていきます。
ドイツ語は英語と同じラテン文字で書きます。ですから、キーボードの見た目も、 日本語キーボードに刻印されたアルファベットとよく似ています。 しかし、ドイツ語には英語にない4つの文字があり、しかも文字の並びそのものが少し違います。 なぜそうなったのかを知っておくと、配列の形に納得がいきます。
ä ö ü の上にある2つの点をウムラウトと呼びます。もともとは点ではありませんでした。
中世のドイツ語では、母音の音が変わることを示すために、その母音の上に小さな e を書き添えていました。 a の上に e、o の上に e、という具合です。 当時使われていた書体では e が縦2本の線のような形に書かれ、それがやがて簡略化されて、 2つの点になりました。
ß はエスツェットと呼びます。この名前は s と z を続けて読んだものです。
かつてのドイツ語には、語のはじめや途中で使う長い s(ſ)と、語の終わりで使う丸い s(s)の 2種類がありました。ß は、この長い s と、そのあとに続く文字がくっついてできた合字です。 よく見ると、左半分が細長い s の形を残しています。
20世紀の前半まで、ドイツ語の本や新聞はフラクトゥール(亀甲文字・ひげ文字)という 角ばった書体で印刷されていました。今のドイツ語の本とはまったく違う見た目です。
1941年、フラクトゥールの使用が公的に取りやめられ、 現在のようなローマン体(アンティクア)に切り替わりました。 今日わたしたちが目にするドイツ語の活字は、このあとの姿です。
1996年に正書法改革が行われ、2006年に手直しされました。 この改革で、ß と ss の使い分けが整理されています。
改革前は daß と書いていたものが、今は dass です。 古い本と新しい本でつづりが違うのは、このためです。
なお、スイスとリヒテンシュタインでは ß をまったく使わず、 すべて ss と書きます。キーボードの配列も、ドイツやオーストリアとは別のものです。
ß は長いあいだ小文字しかない文字でした。 語のはじめに来ることがないため、大文字が必要なかったのです。 すべて大文字で書くときは STRASSE のように SS に置き換えていました。
その後、大文字の ẞ が作られ、2017年にドイツ語正書法の公式な規則に加えられました。 ただしキーボードに専用のキーはなく、使う場面もまだ限られています。
ドイツ語配列で新しく覚えるキーは、次の4つです。どれも右手の受け持ちで、 しかもホームポジションのすぐ近くにまとまっています。
| 文字 | だいたいの音 | 語の例 |
|---|---|---|
| ä | エに近い「ア」。口を横に開く | Mädchen(少女) |
| ö | 口を「オ」の形にして「エ」と言う | schön(美しい) |
| ü | 口を「ウ」の形にして「イ」と言う | über(〜について) |
| ß | 濁らない「ス」。s を強く | Straße(通り) |
ä ö ü は、 もとの母音とは別の音です。schon(すでに)と schön(美しい)のように、 点のあるなしで意味が変わります。打ち分けは大切です。
下の枠をクリックしてから、入力方法を半角英数字に変更のうえ、日本語キーボードのキーをそのまま打ってください。 ドイツ語配列を入れていなくても、この枠の中だけはドイツ語配列として読み取ります。 ; を打てば ö が出ます。
押すキーの例(クリックすると打つキーの並びが分かります)
Shift と 右 Alt(AltGr)も、そのまま試せます。 右Alt + Q で @ が出ます。 この枠の中では、左の Alt でも同じように試せます。
ドイツ語を打つには、パソコンにドイツ語キーボードを追加します。一度追加すれば、 キーを1つ押すだけで切り替えられるようになります。
日本語キーボードにドイツ語の刻印はありません。次のいずれかで対応できます。
ドイツ語の標準配列をQWERTZと呼びます。日本語キーボードのアルファベットの並びを QWERTY と呼ぶのと同じで、 最上段の左から6文字を並べた呼び名です。
キーの上の小さな文字は日本語キーボードの刻印、まん中の大きな文字がドイツ語、
下がそのキーを打つ指です。
枠が黄色く、下の辺が太いキーがホームポジションです。
水色のキー(印は 独)がドイツ語だけの4文字、
橙色で枠が破線のキー(印は 待)がデッドキーで、
押しただけでは何も出ません。くわしくは項目8で説明します。
ö はホームポジションでもあるため、
枠は黄色、文字と印は水色になっています。
左で始まるものは左手、右で始まるものは右手です。 左手のキーは左の枠が太く、右手のキーは右の枠が太くなっています。 うすく見えているキーは、ドイツ語配列では何も割り当てられていません。
色が出ない環境について。 パソコンやブラウザの設定によっては、上の図の色分けが反映されないことがあります。 ハイコントラスト表示(Windowsの「コントラストテーマ」、Macの「コントラストを上げる」)、 画面の色フィルタやグレースケール表示、配色を上書きするブラウザの設定や拡張機能、 それに白黒での印刷がこれにあたります。 そのときは下の辺が太いキーを目印にしてください。 左から A S D F で始まる段がホームポジションです。 ドイツ語だけの4文字には 独、デッドキーには 待 の印が付いていますので、 色がなくてもこの印で見分けられます。
左手の小指から人差し指をそれぞれ a s d f に、 右手の人差し指から小指を j k l ö に置きます。 日本語キーボードの A S D F と J K L ; の刻印と同じ位置です。
日本語キーボードと違うのは、右手の小指だけです。
a s d f j k l ö
日本語キーボードの ; のキーが ö になります。 ホームポジションの8つのうち、7つは日本語キーボードの刻印とまったく同じです。
それぞれの指は、ホームポジションから上下の段へ伸ばして、また戻るのが基本です。 下の表は、各指が受け持つキーの一覧です。
キーボードの上の段から順に並べています。 ホーム の印が付いた文字が、その指の定位置です。
いちどに全部を覚える必要はありません。次の順に広げていくと無理がありません。
a s d f j k l ö
日本語キーボードでアルファベットが打てる方は、右手の小指を ö として覚え直すだけです。 als(〜として)、falls(もし)といった語が打てます。
ö ä ü ß
ここを先に覚えるのが、この手引きのすすめ方です。 日本語キーボードとの違いはここに集中しているので、早く手になじませるほど楽になります。 右手の小指を、ホームから右へ、上へ、さらに上へと動かします。
z y
日本語キーボードの Y の刻印のキーが z、 Z の刻印のキーが y です。 zu、Zeit、zwei と 打ちながら、指に覚えさせてください。
q w e r t u i o p、g h、x c v b n m は、日本語キーボードの刻印と同じ位置です。 覚え直す必要はありません。
/ ( ) = - ´ ` ^
位置が日本語キーボードと違う記号と、デッドキーです。使う場面が来てから覚えれば十分です。 くわしくは項目7と項目8で説明します。
大文字は Shift を押しながら打ちます。日本語キーボードでアルファベットを打つときと同じです。
反対の手の Shift を使います。
記号は数字の段にまとまっています。Shift を押しながら打つものが多いので、 どちらの手の Shift を使うかもあわせて覚えてください。
キーの上が Shift を押したときに出る文字、まん中が Shift なしで出る文字、
下がそのキーを打つ指です。
黄色い枠のキーから記号が出ます。
うすく見えているキーは、Shift を押しても大文字になるだけで、記号は出ません。
デッドキーは、次に打つ文字と組み合わせて1文字を作るためのキーです。 まず記号を押し、続けて母音を打つと、アクセント記号の付いた文字になります。
| 打つ順番 | 出る文字 | 使う場面 |
|---|---|---|
| ´ → e | é | フランス語由来の語(Café、Varieté) |
| ` → e | è | 外来語・人名 |
| ^ → a | â | 外来語・人名 |
| ´ → Space | ´ | 記号そのものを出したいとき |
ドイツ語そのものには、アクセント記号の付いた文字はほとんど出てきません。 Café のような外来語と、人名・地名で使う程度です。 ですから、この3つのキーは最後に覚えれば十分です。 ただし、押しても何も出ないという性質だけは先に知っておいてください。
キーボードの右側にある Alt キーを、ドイツ語配列では AltGr(アルトグラフ)と呼びます。これを押しながら打つと、3つめの文字が出ます。
キーの上が AltGr を押したときに出る文字、まん中が そのまま打ったときの文字、
下がそのキーを打つ指です。
黄色い枠のキーだけが AltGr で別の文字になります。
ドイツ語入力でまちがえやすい例を挙げておきます。
| まちがえやすい組 | 理由 | 対策 |
|---|---|---|
| z / y | 日本語キーボードの刻印と入れ替わっている | よく使う z が打ちやすい位置と覚える。zu を繰り返し打つ |
| ö / ; | 日本語キーボードの ; のキーが文字になる | 小指の定位置が ö だと体で覚える |
| ä / : | 日本語キーボードの : のキー | ö の右どなりが ä |
| ü / @ | 日本語キーボードの @ のキー | ö の上が ü |
| ß / - | 日本語キーボードの - のキーが文字になる | ハイフンは / のキーへ移った |
| - / / | ハイフンと斜線が両方とも移動している | - は / のキー、/ は Shift + 7 |
| @ / AltGr + Q | 日本語キーボードでは @ キーを押すだけだが、そのキーが ü になっている | AltGr + Q。指の形ごと覚える |
| ? / Shift + - | 日本語キーボードでは Shift + / | ß のキーの Shift が ? |
| ´ ` ^ が出ない | デッドキーなので単独では何も出ない | 記号だけ出したいときは続けてスペース |
| ä / ae | 打てない環境でのつづり替え | 正式な書き換えなので、慌てなくてよい |
5分で構いません。長く続けるより、短い時間でやめておくほうが、また明日も開こうという気になります。 疲れたら無理をしないで途中でやめてください。毎日少しずつ進めることに意義があります。
打てない日があっても、それまでの練習が消えるわけではありません。 忙しくて間があいてしまっても、また始めればいいだけです。タイピング練習は「ゆるく・長く」が上達のコツです。
はじめは配列図を見ても構いませんが、手元は見ないでください。 画面と図だけを見て打つようにすると、指が位置を覚えます。
アルファベットがすでに打てる方は、ドイツ語だけの4文字が入った語を選んで打つのがいちばん効率的です。 違いのある部分だけを集中して練習できます。
打ちはじめによい語
| 語 | 意味 | 含まれる文字 |
|---|---|---|
| schön | 美しい | ö |
| über | 〜について | ü |
| Mädchen | 少女 | ä |
| Straße | 通り | ß |
| Grüße | あいさつ | ü ß |
| zwölf | 12 | z ö |
| Frühstück | 朝食 | ü ü |
| natürlich | もちろん | ü |
意味のある文章を打つと、語の区切りやつづりが自然に身につきます。 同じ文章を何度も打つことで、頻出する語や語尾など類似の文字列の指の動きがスムーズになります。 ドイツ語は語尾の形が決まっていることが多いので、同じ並びを繰り返し打つうちに指が覚えてくれます。